今回は、平城京跡の北東に静かに佇む古寺・海龍王寺の見どころを紹介します。
こちらは、旅行航空・交通安全のご利益があり、手を合わせると心が整う十一面観音がご本尊のお寺です。
お寺のご利益を授かり、ぜひ人生という名の旅の安全もお願いしてみましょう。
キーパーソンは玄昉!海龍王寺の由緒
創建年 天平三年(731)
創建者 光明皇后
ご本尊 十一面観音
ご利益 旅行・留学安全祈願
歴史
平城京遷都以前、この地には土師氏ゆかりの寺院がありました。藤原不比等は遷都により邸宅を構える際、この寺院を取り壊しませんでした。
養老4年(720)、光明皇后が不比等の邸宅を相続したため、寺院は『皇后宮内寺院』となりました。
天平3年(731)、唐に渡っていた僧侶・玄昉の帰還に伴い、光明皇后は寺院に伽藍を整備。
唐からの道中、暴風雨に遭遇した玄昉ですが、必死に海龍王経を唱えたことで難を逃れます。(これにちなんで、寺号「海龍王寺」が制定)。
住持に任じられた玄昉は、海龍王寺を『平城京内道場』と定め、伽藍の拡充や般若心経の写経推進に力を入れます。
平安遷都に伴い一度衰退するものの、叡尊上人(※西大寺再興も成し遂げた人物)によって復興し、戒律道場として繁栄。
しかし、室町以降は時代の波に揉まれ、寺は荒廃していまいます。
昭和40年に、寺は解体修理を行い、本堂や西金堂などの荘厳なお堂を構える寺院として蘇ったのです。
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最大の見どころ!十一面観音
美仏・十一面観音のスペック
ご本尊 十一面観音(重要文化財)
造像年代 鎌倉時代
像高 94.0㎝
製作者 慶派の仏師
制作経緯 光明皇后が、自ら刻まれた十一面観音像をもとに造像
通常は戸帳越しの公開です。
毎年3月下旬~4月上旬・5月上旬・10月下旬~11月上旬に行われる、特別開帳等でのみ拝観できます。
詳しくは海龍王寺公式ホームページでご確認ください。
精緻で心が穏やかになる十一面観音
海龍王寺の十一面観音は、シュッとした端正な顔つきが印象的です。
特に腰部分の垂飾はとても精緻で、その美しさと繊細さに心が奪われてしまいます。
手を合わせると、まるで仏の道に優しく導いてくれているような感覚になり、心が穏やかに整う仏様です。
特別開帳時はすぐ近くで拝観できるのですが、少し足音を立てただけで、振動で仏像が揺れてしまいます。緻密な仏像ですので、近くを歩く際はお気を付けください。
ちなみに本堂には、普段は見られない十一面観音の背面部分に施された、切金の拡大画像が展示されていました。ぜひ、併せてご覧ください。
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十一面観音ゆかりの御朱印
海龍王寺では、現在(2023.11)3種類の御朱印が授与されています。
そのうちの二つは、十一面観音に関するものでしたので、こちらで紹介いたします。
まずは、十一面観音と書かれた御朱印です。一枚300円。
この日は特別拝観の日だったため、御朱印希望者も多かったのですが、住職が一枚一枚丁寧に書いてくださいました。
物腰も柔らかく、拝観者の質問にもキチンと対応されている方でしたよ。
2枚目は、妙智力と書かれた御朱印です。一枚300円。
妙智力とは、観音経に書かれている『観音妙智力』という言葉からきています。これは、『観音様の慈悲の力は、世間の苦しみを救いいたまう』という意味です。
御朱印も、観音様の慈悲の力をお授けいただけますようにとの願いから書かれています。
上は、御朱印と一緒にいただける説明書です。
ほかにも見どころたくさん!本堂内部の仏像
本堂内部はご本尊・十一面観音のほかにも、見どころがいっぱいです。
鎌倉時代の重要文化財である文殊菩薩や、優しいお顔が印象的な毘沙門天、隅寺心経などが安置されています。
特に個人的に注目してほしいのが、ご本尊の前にある青いガラスボールです。
ボールには全国各地の海水が入っており、第二次世界大戦の激戦地・沖縄読谷村や岩手・福島等、被災地の海水も含まれています。
犠牲者の冥福を祈るために置かれている美しいガラスボールです。ぜひ、手を合わせて祈りをささげましょう。
天平時代の貴重な五重塔は外せない見どころ
五重小塔(国宝)
造立年代 奈良時代前期
高さ 4.01m(相輪まで 2.85m)
この五重小塔は、創建当初から西金堂内部に安置されていたと伝えられています
早期天平時代の技法を用いており、この時代の五重塔は、これ一基しか現存しておらず、非常に価値が高いといえるでしょう。
宮内寺院という限られた敷地内に伽藍を造るために、五重小塔を造立したといわれています。
西金堂内に安置されている、国宝・五重小塔も、海龍王寺の見どころのひとつでしょう。
お寺の塔といえば、普通は何十メートルもあるものを想像してしまいますよね。こちらの塔は小さいお陰で、細部まで眺められるので、拝観者にとってはうれしい限りです。
近くで見ると、非常に精緻な技法で造られていることがわかります。小さいながらも荘厳で趣があり、見ているだけでも心穏やかな気持ちになれる塔です。
忘れずに見ておきたい!そのほかの見どころ
海龍王寺表門 奈良市指定文化財(昭和63年指定)
造立年代 16世紀
建築様式 四脚門・切妻造・本瓦葺・左右築地塀付
表門の位置は、平城京の東二坊大路に面する場所にあたります。
屋根の垂木が反り増していたり、控柱の面の部分が大きかったりなど、中世建築様式を今に伝えている、貴重な門です。
海龍王寺本堂 奈良市指定文化財(昭和63年指定)
建立年代 17世紀
建築様式 桁行五間・梁間四間・入母屋造・本瓦葺
奈良時代に建っていた西金堂の位置を踏襲しています。江戸時代の建築でありながらも、奈良時代の仏堂様式と似ている点が多い建物です。
西金堂 重要文化財
造立年 天平3年(731)
建築当初から残っている、非常に貴重な建物です。一部に奈良時代の木材を残しています。
一切経蔵(重要文化財)
造立年 正応元年(1288)
経典や文書を納める、高床式の倉庫。どっしりとした、重厚感のある蔵です。
東金堂跡
西金堂と対となる形で建っていた東金堂。明治時代の廃仏毀釈の影響により、現在は、その跡地のみを残す形となりました。
春日社
境内外にある、海龍王寺の鎮守社。
ご祀神 天児屋根命・白山比咩命・伊弉冉命
まとめ
海龍王寺は、訪れるだけでも心が穏やかになり、満ち足りた気持ちになれるお寺です。
落ち着いた心は、旅の安全には欠かせませんよね。そんな心があれば、人生という旅も楽しめるかもしれません。
あなたもぜひ、海龍王寺を訪れてみませんか。
真言律宗 海龍王寺
住所 〒630-8001 奈良県奈良市法華寺北町897
TEL:0742-33-5765
FAX:0742-34-7443
開門時間 9:00~16:30 (特別公開時は9:00~17:00)
※8月12日~17日、12月24日~31日は、お寺の行事のため閉門
拝観料 大人500円 中高生200円 小学生100円(特別公開時は 大人600円 中高生300円 小学生100円)
電車・バスのアクセス
近鉄・JR奈良より 奈良交通バス「大和西大寺駅・航空自衛隊前」行きで法華寺前下車すぐ
近鉄大和西大寺駅より 奈良交通バス「JR奈良駅」行きで法華寺前下車すぐ